ミッションステートメントとは 企業理念体系概説
ブランディング
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ミッションステートメントという言葉
“Mission Statement”は、“Mission”と”Statement”という二つの英単語の組み合わせです。
辞書を引くと、Missionには「果たすべき使命」のほかに、任務、布教、伝道、使節団、などの意味があることがわかります。ミッション系スクールといえばわが国では主としてキリスト教系の学校を指します。
1986(昭和61)年の英・仏・米合作映画「THE MISSION」で描かれた内容は、南米の奥地で布教を進める、イエズス会修道士たちの苦闘のストーリーでした。
このように、もともとミッションには「神の教えを広めること」という意味合いが込められています。スクールにしろ使節団にしろ、キリスト教集団としての行動原理は、すべてこの一点に集約されるのです。
MVVを中心とした企業理念の体系化手法は、ドラッカーらにより欧米で発達したものですから、一般の組織や集団の行動ロジックにキリスト教的組織のそれをあてはめるのは、ごく自然な考え方だったのかもしれません。
これにより、企業経営におけるMissionは「目標として掲げる、共通の大きな理想像=我々は何のために存在するのか」を表すものとなったのです。
一方、Statementには述べること、陳述、声明、供述、声明書、正式な外交声明文などの意味があります。単語ではなく叙述により何かを表明することであり、またその述べられた文章自体を指すもの、と考えてよいでしょう。
個人情報保護方針の英訳は”Privacy Statement”であり、”There is a separate statement”と記されていたらそれは「別途記載あり」の意になります。
これらのことから、“Mission Statement”は「自分たちが実現を目指す理想像や使命を叙述した文章」、すなわち冒頭で定義した「自らの存在意義、使命を言葉で表現したもの」ということになります。
ミッションステートメントという言葉が人口に膾炙(かいしゃ)するようになったのは、「7つの習慣」という本の出版に負うところも大きいでしょう。同書はスティーブン・R・コヴィーによって著され、1996(平成8)年12月に邦訳が出版されました。全世界で4,000万部、日本国内240万部を売り上げたこの「7つの習慣」では、個人も自らの人生の意義を見つけるためにミッションステートメントを「叙述する」ことが推奨されました。ミッションステートメントという言葉は、企業と個人の双方を対象としてある程度の認知を得たのです。
ミッションステートメントとスローガンとの違い
ミッションステートメントは、時としてスローガンと混同されることがあります。どちらも
◆ミッションやビジョン、バリューなど基本的な理念をベースとしている
◆端的な言葉に集約して表現している
◆媒体に表示し、広く伝達することを目的とする
という共通点があるからです。
これに関してはそれほど神経質に分けて考える必要はありません。企業や組織の理念体系はそれぞれ独自に形成されてしかるべきものなので、それらをどのように呼ぶか、についても厳密な規定はないのです。
ただ、一般的なガイドラインとしては
スローガン:主として対外的な標語として用いるもの。コーポレートレベル、ブランドレベル、個別の商品・サービスレベル、店舗や事業所レベルなど階層ごとに存在する場合もある。
コーポレートステートメント:ミッションステートメントをさらに集約して短く表現したもの。コーポレートスローガンとの区別が難しいが、使用期間が長いものをコーポレートステートメントという場合が多い。
と考えて差し支えありません。
コーポレートステートメントの実例
も丸紅新電力では、企業理念体系の表現系それ事態を、ミッションステートメントと総称しています。
ミッションステートメント|企業情報|丸紅新電力 (marubeni.co.jp)
も特許・知的財産の専門支援会社である知財コーポレーションも、「ミッション」と「バリュー」を合わせてミッションステートメントと呼び、これらを記した小冊子を「クレドカード」と呼んで携帯しています。
知財コーポレーション ミッションステートメント (chizai.jp)
も日本赤十字社のミッションステートメントは、「日本赤十字社の使命」「わたしたちの基本原則」「わたしたちの決意」という三項目で形成されたものです。
施設紹介|京都府赤十字血液センター|日本赤十字社 (jrc.or.jp)
ミッションステートメントが「自らの存在意義、使命を言葉で表現したもの」である以上、策定する際のスタート地点は企業・組織・個人を問わず「内省」にほかなりません。そこには、一言で簡単には表現できない世界があるはずです。その検討と認識を経てのち、言葉を極限まで研ぎ澄ましてこそ、共感を呼び実効力を伴うミッションステートメントが表出されるのではないでしょうか。
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ライタープロフィール
神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長
創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。