人口減少社会とブランディング 大量生産時代の終焉
ブランディング
今回のテーマは「人口減少とブランディング」です。
人口減少社会とブランディング、一見あまり接点のないワード同士のように見えます。しかし、少子高齢化に起因する人口の減少は、我が国の経済や人々の生活に大きな影響をもたらすものです。企業活動の根本であるブランディングも、その例外ではありません。
我が国の人口減少状況
総務省の統計分析によると、それまで伸びていた日本の総人口は2008年をピークとして減少傾向に転じていることが分かりました。調査時点の2016年以降について国立社会保障・人口問題研究所が推計したところでは、2050年のわが国総人口は1億人を割り込むとされています。65歳以上の高齢人口は既に14歳未満の若年人口数を上回っています。
総務省|平成30年版 情報通信白書|人口減少の現状 (soumu.go.jp)
ここから今後の市場状況は、
◇生産労働人口の減少により生産活動、経済活動全体が縮小する
◇国内消費の市場規模が縮小する
◇小規模化する若年市場に対し競争が激化する
◇一方、拡大する高齢者市場を狙っての参入が増大
◇需要を求めて海外への進出が増加
◇地方都市の過疎化、消滅危機が本格化
雇用に関しては
◇地方や中小企業の雇用力は減退傾向に
◇優秀な人材確保に向けた競争は激化
◇AI、ロボット、自動化ツールなど省人力テクノロジーが進む
◇外国人労働力の流入が拡大
◇年金受給年齢が引き上げられ支給額も減少、働きたい高齢者が増える
という予測が導き出されます。
「ブランディング」の視点から見た課題
前章に示した通り、人口減少社会はわが国の生産・消費市場および労働市場に大きく影響を及ぼします。本章では、それが「ブランディング」の活動にどのように影を落とすのか、一つひとつ具体的に解説します。
大量生産・大量消費時代の終焉
市場規模が縮小することにより、これまでのような「よいものを大量に、より安く」という、マス・マーケットを意識した思想は変革に向かうことが予測されます。人口減少だけでなくサスティナビリティ志向や、商品・サービスのコモディティ化も要因となり、大量生産・大量消費の時代は終焉して、新たな質的付加価値の重要性が増します。
そこで企業はどのような価値を消費者に訴求するのか、というブランディングが不可欠となるのです。
激化する市場競争で勝ち残る価値の訴求
消費者数という視点で見ると、若年層は少なく、高齢者の数が増えていきます。若年層向けの商品・サービスはパイの奪い合いで競争が激化していくでしょう。一方高齢者向け市場は有望のように思えますが、市場規模に合わせて参入も増え、やはり競争が激しくなります。
競争に勝ち残るためには、「選ばれる理由」を与えるブランディングの重要性がこれまで以上に増大します。
「日本ブランディング」のリセット(リ・ブランディング)
かつて日本製品は優秀で、国際的にも高い競争力を持つものとされてきました。しかしその優位性は、既にアジアほか新興国にとって代わられています。競争が激化する海外市場で選ばれ続けるためには、わが国の技術力や信頼性などを強くアピールし、再び「日本製品なら間違いない」という地位を確保する必要があります。
産学官の連携強化を含めた、日本製品の「リ・ブランディング」です。
採用ブランディング活動の活性化
優秀な人材を確保するための「採用ブランディング」も欠かすことはできません。パワハラ、モラハラが横行するブラック企業は論外です。人材育成や労働環境に関する情報の公開、就職希望者が共感できる企業理念、各種制度や施策といった企業の魅力を伝える情報を、適切なチャネルで提供していくことが人材確保につながります。
地方ブランディング、自治体ブランディングの必要性
人口バランスの崩れは、地方都市の過疎化や消滅の危機を加速させます。かつて賑わいのあった繁華街や産業地帯も、衰退の危険を免れなくなってきています。「限界集落」「限界ニュータウン」「限界自治体」などの言葉が示すように、存続が危ぶまれる地域は人口の減少を食い止めるだけでは足りません。自治体経営の観点から、人口の流入を促す施策を検討し、企業と同じように「居住者から選ばれる自治体」となるよう、ブランディングをしていかなくてはなりません。
最後に
ライタープロフィール
神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長
創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。