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MAツール(マーケティングオートメーション・ツール)の活用ガイド〜基礎から応用まで

ブランディング

マーケティングオートメーション・ツール(以下、MAツール)は、現代のマーケティングにおいて不可欠な道具となっています。MAツールはITツールの一種です。
企業は今、自社のマーケティングを個別化、効率化、多様化していかなければならず、それにはITの力でマーケティング施策を自動化(オートメーション化)していく必要があるわけです。
ただし、一口にMAツールといっても種類はさまざまで、今なお新しいものが開発されています。企業のマーケターはどのMAツールを採用すればよいか迷うのではないでしょうか。
そこでこの記事はMAツールの活用ガイドとして、基礎知識から応用編まで解説していきます。

MAツールはマーケティングを自動化する道具

まずMAツールとはなんなのか、さらにそもそもマーケティングの自動化(マーケティングオートメーション、MA)とはなんなのかについて解説します。

●マーケターが人でしかできない仕事に専念するための道具
マーケティングの定義は複雑ですが、ここでは顧客を増やすための企業の活動としておきます。企業は顧客を増やすためにさまざまな取り組みを行ないますが、その一つがマーケティング施策になります。
マーケティング施策こそ企業のマーケターの仕事になるわけですが、仕事ならITで自動化できるはずです。ITはこれまで、ビジネスパーソンのあらゆる仕事を自動化してきました。そしてマーケティング施策の自動化がMAになります。
ただし、MAといってもITですべてのマーケティング施策を代行できるわけではありません。コンピュータでできない仕事は、人間のマーケターが従来どおり行う必要があります。
しかしマーケティング施策の一部、または大部分をMAに置き換えることで、マーケターの仕事はかなり減ります。これにより、マーケターはより本質的な仕事に専念できるようになるわけです。

●ITにしかできないことができる道具
MAを実現するための道具であるMAツールは、ITすなわちコンピュータやインターネットでできています。ITはビジネスに革命をもたらしたわけですが、MAツールもマーケティングに革命を起こしています。
MAツールはマーケターの仕事を減らすだけでなく、人ではできないこともやり遂げます。例えば、企業がアンケートを実施するとき、人の手で紙のアンケート用紙を使って行う場合、100人から回答を集めるのがやっとでしょう。しかし、MAツールを使えば1000人アンケートや10000人アンケートも簡単に実施できます。
MAツールは、ITでマーケティング施策のレベルを上げる手法、ということもできるわけです。

企業がMAツールを使うメリット

企業がMAツールを導入するメリットには、少なくとも次の5つがあります。

MAツールが企業にもたらす5つのメリット
・効率化できリソースを節約できる
・ターゲット指向のマーケティングが可能になる
・顧客の行動や反応を追跡・分析できる
・顧客エンゲージメントが高まる
・マーケティングを進化させられる

先ほどの説明と一部重複するところがありますが、あらためてメリットとして紹介します。

●効率化できリソースを節約できる
企業がMAツールを導入すると、マーケターは自分の仕事を大幅に効率化できます。例えば、メールを送って商品やサービスを見込み客や顧客にアピールするメールマーケティングでは、マーケターはメールを作成しなければなりません。しかし、商品・サービスの写真と説明文を送っただけでは訴求力は弱いため、内容を吟味したりデザインを工夫する必要が出てきます。これをマーケターが自力で行うには相当な労力を要しますが、メールマーケティング・ツールを使うとコンピュータが自動で「良い感じ」のアピール・メールを作成してくれます。
企業のマーケティングにおいてもっとも重要なリソースはマーケターなので、マーケターの業務を効率化できれば、リソースの節約につながります。節約できたリソースは、より重要な作業に向けることができます。

●ターゲット指向のマーケティングが可能になる
ターゲット指向のマーケティングとは、特定の顧客層や特定の市場などをターゲットとし、そのターゲットのニーズに応えるマーケティング施策を行う手法です。したがって、ターゲット指向のマーケティングは、非ターゲット指向のマーケティングより有利に機能します。
しかし、ターゲット指向のマーケティングの実施には手間がかかるため、すべての企業が実行できるわけではありません。
ここでもMAツールが活躍します。MAツールで見込み客管理や顧客管理ができれば、自社がターゲットにすべき顧客層や市場を絞り込むことができます。そして、ターゲットを絞り込んだらパーソナライズされたマーケティング施策を打ち出すことで見込み客を顧客に、顧客をリピーターにすることが可能になります。もちろん、パーソナライズされたマーケティング施策に使えるMAツールもあります。

●顧客の行動や反応を追跡・分析できる
企業の顧客が増えていくと、ITを使わない非MAなマーケティングでは、顧客の行動や反応の追跡が困難になります。そして顧客の行動・反応を分析することはさらに難しくなるでしょう。
MAツールは自動で顧客を追跡します。さらにMAツールの分析機能を使用すると、追跡して集めた顧客データを分析することができます。
その分析結果は、次のマーケティング施策を考えるときの貴重な情報になるでしょう。

●顧客エンゲージメントが高まる
企業が顧客とのエンゲージメント(企業と顧客の信頼関係)を強化したいと考えるのは、エンゲージメントが強化された顧客は自社商品・サービスを継続的かつ集中的に購入するようになるからです。
エンゲージメントを強化するには、商品・サービスの魅力を高めることが欠かせません。しかし、良い商品・サービスを提供したからといって、顧客が必ずリピーターになるわけではないことはマーケターなら承知しているはずです。
エンゲージメントを強化するには、顧客とのつながりが必要になります。メールやSNSは「つながりツール」になるわけですが、人の手でメールやSNSで顧客とつながろうとすると専属のスタッフが必要になるためコストがかかります。
自動メール・ツールやSNS投稿管理ツールを使えば、手間やコスト、時間をかけずに顧客とつながることができます。

●マーケティングを進化させられる
MAツールは確実に自社のマーケティングを進化させるでしょう。効率化とリソースの節約によってマーケターは企画やアイデア出し、実地リサーチに注力できるので、マーケティングの質を高められます。そしてMAツールでしかできないマーケティング施策によって、漏れも無駄もないマーケティングが可能になります。
自社のマーケティングに一度MAツールを採り入れた企業は、もうMAツールなしのマーケティングに戻ることはできなくなるでしょう。

MAツールの種類と機能を解説

ここまではMAツールでできることを「大雑把」に紹介しましたが、ここからはMAツール活用ガイドの応用編として「細かく」紹介していきます。
よく使われるMAツールだけでもこれだけの種類がありますが、こちらのすべての機能について解説します。

・リード管理ができるツール
・スコアリングができるツール
・シナリオ作成に役立つツール
・メールマガジンを配信するツール
・ワークフロー管理ができるツール
・顧客セグメンテーションができるツール
・ソーシャルメディア管理ができるツール
・分析とレポートができるツール
・A/Bテストができるツール
・自動化されたキャンペーンを実施できるツール

●リード管理:見込み客を囲い込む
リード(企業のマーケティング施策によって生み出された見込み客)管理ができるツールは、見込み客の囲い込みに使うことができます。最もよく知られているリード管理ツールは、企業のサイトに設置した「問い合わせフォーム」でしょう。サイトの閲覧者がその企業に問い合わせたい内容を送信します。問い合わせフォームには閲覧者の個人情報も入力してもらうので、リード管理ができるわけです。
さらに、問い合わせフォームに入力した人に自動でホワイトペーパーやPRメールを送信するツールを使うと、より強固に見込み客を囲い込むことができます。

●スコアリング:「客の質」を数値化する
顧客をつくるには、まず一般消費者を見込み客にし、それを囲い込み、商品・サービスの情報を提供して魅力を感じてもらう、といった過程を踏む必要があります。しかし、すべての見込み客にこうしたアプローチをするのは非効率的です。
そこで見込み客をスコアリングして「客の質」を数値化し、数値が高い人にアプローチを仕掛けていきます。
MAツールにはスコアリング・ツールがあり、見込み客のデータからその見込み客が自社商品・サービスにどの程度関心を持っているかを数値化していきます。企業のマーケターはスコアリング数値が高い見込み客から先にアプローチすることで、「顧客にする確率」を高めることができます。

●シナリオ作成:マーケティング施策を効率的に進める
顧客を増やすには、マーケターがあらかじめシナリオを計画しておくことが不可欠です。シナリオは一般消費者を見込み客に変え、見込み客を顧客に変えるための一連のステップやプロセスを示したものです。
MAツールのシナリオ作成機能は、マーケターが事前に計画した一連のマーケティング・プロセスを自動化するためのツールです。
例えば、自社サイトの訪問者が特定のページを閲覧した場合、自動的に関連するコンテンツを提供することができます。また、消費者が問い合わせフォームから問い合わせをしたとき、自動で次のアクションを促す通知を送信することができます。さらに、見込み客が特定のアクションを実行した場合、自動的にフォローアップの電子メールを送信することも可能です。

●メールマガジン配信:顧客との結びつきを強化する
メールマガジンの自動配信機能も、企業でよく使われるMAツールの一つです。メルマガは一時、SNSの台頭により廃れたかのようにみえましたが、その後復活を遂げています。
メルマガのよいところはシンプルであることです。企業はメルマガに、新商品・サービスの紹介やイベント案内、自社の動向などの情報を送信します。SNSのようにトレンドを追ったり受けを狙う必要がなく、企業は訴求したいことだけをメルマガに載せることができます。顧客のなかには企業が訴求したい情報だけを求める人がいるので、メルマガには一定の需要があるわけです。

●ワークフロー管理:プロセスとタスクを視覚化する
ワークフロー管理は、MAツールのなかでも業務管理ツールになります。マーケティング施策はいくつかのフェーズに分けて実行していくことになるので、ワークフロー管理が必要になります。ワークフロー管理機能を搭載したMAツールを導入すれば、マーケティング・チームで情報の共有が可能になります。また、ワークフロー管理ツールはプロセスやタスクを視覚化できるので、マーケティング・チームのメンバーは、自分たちがしなければならないことや進捗状況を理解しやすくなります。
ワークフロー管理ツールの導入は、チームワークを強化するでしょう。

●セグメンテーション:顧客や市場をグループ分けする
セグメンテーションはマーケティングにおいて、顧客や市場をグループに分ける作業を指します。これにより、マーケターは特定の客層や重要な市場を識別し、マーケティング施策を最適化できます。
MAツールのセグメンテーション・ツールは、マーケターが定義した条件や属性に基づいて顧客を分類します。あとは、マーケターがそれぞれの顧客グループのニーズを満たすマーケティング施策を打ち出していけばよいのです。
さらに、既存の顧客データを活用してセグメンテーションを行うことも可能です。すでに多くの顧客を抱える企業なら、セグメンテーション・ツールを使って顧客をグループに分けることができます。これにより、顧客のニーズや好みに合わせた施策を打ち出せるので、より効果的なマーケティング施策になるでしょう。

●SNS管理:効果的かつ安全な投稿を可能にする
SNS管理ツールには、プレビュー機能、投稿予約機能、自社アカウント分析機能、コメント監視機能、口コミ分析機能などが搭載されています。SNSは「バズり」というムーブメントをつくりだすほど強力なPR効果を持ち、マーケティング施策では必須アイテムになりつつあります。
ただし、SNSマーケティングには「炎上」というリスクもつきまといます。炎上を引き起こすと商品・サービスが売れなくなるだけでなく、企業のブランドにも傷がつきます。SNS管理ツールの導入はSNSマーケティングの効果を高めたり、炎上リスクを減らすことができます。

●分析とレポート:マーケティング施策を定量評価する
MAツールの多くに分析機能やレポート機能が搭載されています。MAツールは集めた情報をデジタルデータにすることができるので、コンピュータ処理が容易になり、したがって分析を簡単に実施できるのです。レポート機能は分析結果を見やすい資料に加工します。
マーケティング施策は実施後に定量評価することで改善していくことができます。そして分析機能やレポート機能は、定量評価をスピーディに実施するために必要になります。

●A/Bテスト:コンバージョン率を高める
A/Bテストとは、AとBの2つのバージョンを用意して、消費者がどちらを好むか測る方法です。例えばWebサイトのデザインを2バージョン用意して、閲覧者の反応をみます。
A/Bテストは1回1回は単純な作業ですが、回数を数多くこなす必要があるので手間がかかります。A/Bテスト・ツールを使えばこの作業を自動化できるので、何回でも繰り返し行うことができます。
A/Bテスト・ツールを使えばWebサイトのボタンの色、テキスト、広告の画像とコピー、ランディングページのレイアウトについて良案がみつかるでしょう。

●自動化されたキャンペーンを実施:最短でエンゲージメントを高める
消費者や見込み客、顧客を喜ばせるにはマーケティング・キャンペーンを次々展開していく必要がありますが、回数を増やしたり内容を充実させるほど、当然ですがコストと手間と時間がかかります。
そこでMAツールの自動キャンペーン・ツールが活躍します。自動キャンペーン・ツールで自動化できるキャンペーンにはウェルカム・メールの送信やコンテンツの提供、ショッピングカートに追加したのに購入しなかった人へのリマインドメールなどがあります。

具体的な利用シーン

MAツールを具体的にどのように使っていくのか、BtoB向けとBtoC向けに分けて紹介します。

●BtoB向けのMAツール
見込み客のスコアリング・ツールは、BtoB企業のマーケティングで使うことができます。BtoB企業が新規に顧客企業を開拓するとき、マーケターはターゲットになりうる企業1社1社に丁寧にアプローチしていくことになるでしょう。したがって複数のターゲット企業に優先順位をつけ、優先度が高い企業から攻略していくことになります。
スコアリング・ツールでターゲットになりうる企業に点数(スコア)をつければ、最良の顧客になるポテンシャルを持つ企業に最初にアプローチすることができるわけです。

●BtoC向けのMAツール
BtoC企業が効果を上げやすいMAツールは、自動キャンペーン・ツールです。マーケターがこれを使えば大量の消費者や大量の見込み客に接触することができます。マーケティングの初期は物量作戦が有効になりますが、自動キャンペーン・ツールはそのときの有力な武器になるでしょう。
また、メールマガジン自動送信ツールは、企業と消費者との結びつきを強化します。メルマガを読み続けている消費者は「この企業のことをもっと知りたい」と思ってくれている人です。新商品・サービスの情報を公式発表の少し前にメルマガで送れば、消費者はより一層メルマガの着信を心待ちにするようになります。

まとめ〜導入しない理由はみつからないはず

MAツールの導入は、自社のマーケティングを確実に進化させます。マーケターがすでにできていることが効率化され、できていなかったことができるようになるからです。そしてコスト、手間、時間をすべて減らします。もちろんMAツールはITツールなので導入費用はかかりますが、その回収はすぐに済むはずです。
コスト安なのに高品質のマーケティングをつくっていくには、MAツールは不可欠な道具です。
企業には今、生産性を向上させるためにDX化が求められているわけですが、MAツールの導入はその第一歩にもなりえます。したがって、マーケティングに力を入れている企業において、MAツールを導入しない理由はみつからないでしょう。

ライタープロフィール

神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長

創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。

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