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今どきフレッシュパーソンが望む!「非金銭報酬」 細田悦弘の企業ブランディング 〈第47回〉

ブランディング

今年も、新入社員が入ってきました。多くの企業が5年ぶりの全員対面の入社式で、新入社員たちは期待のまなざしを送っていました。今どきのフレッシュパーソンが求める処遇は、給料(金銭報酬)だけではなく、「非金銭報酬」が重要なようです。

給料だけでなく、「働きがい」ください

就業価値観が多様化する今日のフレッシュパーソンは、給料以外の報酬を企業に望むようです。それは、仕事を通じて「社会のためになりたい」「自分を高めたい」というのが二大潮流といえます。自社で働くことで、「社会の役に立つ」という使命感のもとに、どれだけ働きがいや充実感を持って仕事ができるか、また仕事を通じて「自己成長感」を実感し、今後のキャリアデザインをイメージできるか。近年、若手社員を中心に、この2つの要素から醸し出される「働きがい」を重視する傾向が高まってきています。仕事を通じて働く人が成長すること、つまり「就労経験を通じての成長」が重要となっています。若年層の初期キャリアにおける成長は、長期的な観点から、30代、40代、50代になった時の企業自体はもとより、産業や地域、そして国の将来の成長に大きな影響を与えます。

現代を生きるビジネスパーソンにとって、「働きがい」は給料以外の処遇、すなわち「非金銭報酬」となっています。企業が従業員に期待する帰属意識やモチベーションは、金銭報酬だけでなく、非金銭報酬を合わせた「総報酬(トータルリウォード:Total Reward)」によって醸成されます。環境の変化が激しく、専門性が求められる時代においては、働きがいを通じてこそ、単なる業務効率を超えた高付加価値による生産性の向上が実現できます。現代企業は、「雇用の質」が問われています。この構造をハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」を用いて解説してみます。

ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」

「動機付け・衛生理論」とは、二要因理論とも称され、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱しました。「職務満足」および「職務不満足」を引き起こす2つの要因に関する理論のことです。ハーズバーグは、「動機付け・衛生理論」の中で、職務満足に関する要因には「不満足要因」と「満足要因」があるとしています。「不満足要因」には、会社方針や職場環境、給与、対人関係などがあり、これらが少しでも欠けると、人は不満を感じるということです。不満足要因は、「衛生要因」とも呼ばれています。一方、「満足要因」とは、仕事内容、達成感、承認、責任、昇進、成長の可能性などを指します。これらの要因が十分であるときに、人は意欲が高まります。満足要因が満されることで、積極的な動機付けが行われ、やる気が増幅することから、「動機付け要因」と呼ばれています。

ここで留意することは、満足な(動機付け要因が満たされている)状態と、不満ではない(衛生要因が満たされている)状態とはまったく異質なものだということです。少ないとネガティブな低感情を作り出してしまいますが、しかし多く与えたからといってそれがやる気などのポジティブな高感情には必ずしも比例しないというのが、「衛生要因」だとしています。やる気を引き出すには、衛生要因が満たされるだけでは足りず、「動機付け要因」が働く必要があります。一方、動機付け要因だけを増やしても、衛生要因が満たされていなければ、従業員の不満が高まっていきます。言い換えれば、衛生要因を満たすことは、やる気を引き出すための前提条件と言えます。

これをレストランに例えると、厨房が不衛生だと不満足ですが、厨房をピカピカにするだけでは、美味しい料理は出来上がりません。逆に、美味しい料理は、厨房が衛生的であってこそ成り立つものです。すなわち、給料があまりにも低いと不満だけども、給料さえ上げれば満足するということにはならないという意味です。2要因のバランスを考慮することが重要です。

「不満足」の反対は、「満足」ではない

この理論で注目すべきは、職務における「不満足」の反対が「満足」でないということです。そのため、職務に満足してもらおうと、どれだけ不満足要因の解消に努めても、不満足でない状態になるだけで、決して職務満足には至らないということです。すなわち、不満足の反対は、「満足」ではなく、「不満足でない」ということです。「満足」を得たいなら、動機づけ要因が要るというわけです。

企業が持続的成長を果たすには、不満要素である衛生要因をクリアした上で、満足要素である動機付け要因をいかに満たしていくかがポイントになります。この時代に意欲を持って働く人たちにとって、金銭報酬だけでなく、非金銭報酬が必要不可欠といえそうです。仕事で感じるやりがい、達成感、承認感、また仕事を通じて成長できているという実感、将来にわたって自分のキャリアデザインが見通せる期待感などは、まさしく令和のフレッシュパーソンが望む「非金銭報酬」といえます。「働きやすさ」といっしょに「働きがい」が欲しい、「衛生要因のみならず、動機づけ要因」への流れがきているようです。

「サステナブル・ブランディング」で、誇りイキイキ

「サステナブル・ブランディング」は、ビジネスと社会課題解決を両立させ、『らしさ』で競争優位を創り出す戦略メソッドです。仕事を通じて社会のためになる。すなわち、社会課題解決に資するビジネスを考案するためには、柔軟な思考によるイノベーションが求められます。それは結果として、自己の成長に加えて、仕事の意義を感じられます。そして、社員一人ひとりが自社のブランドを担い、主体的に『らしさ』を発揮することにより、ロイヤルティが高揚し、エンゲージメントが強化されます。

社員が『誇りイキイキ』と職務にあたれば、無形資産としてのコーポレートブランドを高め、持続的成長・中長期的な企業価値向上につながります。「サステナブル・ブランディング」は、企業にとっては「財務・非財務」に貢献し、社員には「金銭報酬・非金銭報酬」の源泉をもたらします。

ライタープロフィール

細田 悦弘(ホソダ エツヒロ)

公益社団法人日本マーケティング協会「サステナブル・ブランディング講座」講師 / 一般社団法人日本能率協会 主任講師
企業や大学等での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。
サステナビリティ・ブランディング・コミュニケーション分野において豊富な経験を持ち、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。
※本文著作権は細田悦弘氏に所属します。

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