バイヤーをコンバートさせるBtoBコンテンツマーケティング戦略3つのポイント
コンテンツマーケティング
「訪問者」を「顧客」にコンバートする効果的なコンテンツの重要性は、今となってはほぼすべてのマーケッターが理解しているだろう。実際に、ビジネスを成長させるために、10人中9人のBtoBマーケッターがコンテンツマーケティングを行っているという調査結果もある。
しかし、そこに落とし穴があることに気付いて欲しい。多くのマーケッターがコンテンツマーケティングを、“コンテンツの作成、発信、そして成功したらラッキー”程度にしか考えていないのだ。そしてそれがたまたま成功したら、必然的にそれを正しい手法だと勘違いしてしまう。
実際のビジネスワールドでは、そのような単純な図式が成り立たないことは理解しているはずである。なにせ相手は百戦錬磨のバイヤーである。彼らは自分たちのコンテンツの好みや必要性を認識している。コンテンツマーケッターにとって幸運なのは、このような明確なバイヤーの行動を把握することで、有効なコンテンツ戦略を組み立てられることだ。
以上のことを念頭に、コンテンツマーケティングを成功させるための3つのポイントを紹介しよう。
1.有効なコンテンツのオプションを知る
古い言い回しで ”ワンサイズ フィット オール” というものがあるが、今日のビジネスバイヤーには通用しない。オンラインの検索ツールやソーシャルネットワーキング、迅速なサービス対応など、様々な装備で彼らに対峙しなければならない。そして手ごわい顧客の注目を引き留めるための有益なコンテンツの重要性が、BtoB企業の間で共通認識として広がっている。
味の好みについて考えてみよう。ある人とっては好きな味でも、別な人にはある理由で受け入れられないことはよくあることだ。ビジネス向けコンテンツでも同じことは起こる。eメールのニュースレターはバイヤーグループAに有効でも、グループBには更にトピックを掘り下げたホワイトペーパーが必要なのかもしれない。
2.コンテンツの発信タイミングを知る
購買サイクルのどのタイミングでどのコンテンツを発信するのかは、見込み客を顧客に、または一回きりのバイヤーを生涯のパートナーにコンバートするための重要な要素である。どのようなコンテンツが見込み客に訴えかけるのかを知るのと同じぐらい、コンテンツのシェアや公開タイミングを知ることは重要なのだ。
例えばホワイトペーパーを初めてダウンロードした見込み客に対し、強烈なセールスeメールを送るのは避けたほうが良い。
正しいアプローチの仕方としては、関連情報を紹介するウェビナーへの招待eメールを送ったり、質問や製品についてより理解を深めたいかの打診目的の問い合わせをしたりすることだ。
3.成功の判断方法を知る
なにはともあれ結果の成否や、改良の余地があるのかは気になるところである。どの産業のビジネスにおいても、コンテンツマーケティングを実施する目的は売上向上である。コンテンツマーケティングの有効性を知るためには、次のような指標を参考にすればよい。
- クリックスルー率やeメール開封率の高さ
- ソーシャルメディアでのシェア率や浸透度の高さ
- ウェブのアナリティクスレポートを分析することで得られるダウンロード数、キーワード、被リンク数など
- ランディングページやターゲットコンテンツでのコンバージョン率の高さ
単にコンテンツを作成、発信するだけでは、成功率を高めることはできない。バイヤーのリサーチを元に、どのタイミングでどのようなコンテンツを発信するのが有効なのを知るところから始めよう。
B2Bバイヤー個人に合わせたコンテンツを提供しよう
IDG Connectの調査によると、B2Bバイヤーはコンテンツの関連度の低さに不満を持っている。
購買決定にいたるまでにコンテンツが寄与した割合が、この5年で31%も低下したというのだ。マーケッターがいくらコンテンツをかき混ぜたり、SEOマジックに頼ったりしても、この状況を改善できていないのが現状だ。
コンテンツの関連度の低さが、バイヤーの購買決定プロセスを20%も長引かせている。
この状況を打開するキーワードは、“パーソナル化”である。
パーソナル化とはバイヤー個人の関心事、ニーズ、行動、ラーニングスタイルなどのプロファイル情報を捉え、活用することだ。
パーソナル化で得られる情報は、登録フォームの記入から得られる情報より確度が高いといえる。
IDG Connectの調査によると、一般的な登録フォームの約3割は、不確実な情報が登録されているという。
「購入準備OK」など、あいまいな質問では、確かな情報は得られないのだ。
バイヤーからは役割、ビジネスの関心事、購買ステージとタイプ、好きなコンテンツフォーマットなど、有益な情報を入手しなければならない。
そして情報を活かし、高度にカスタマイズした効果的なコンテンツを作るのだ。
そのインパクトは絶大だ。同じくIDG Connectの調査によると、パーソナル化したコンテンツが、eメールの開封率を42%も高めている。
購買プロセスは熟慮を要する長旅のようなもので、スプリント競技のようにはいかない。
バイヤーの確信を、徐々に高める作業が必要とされる。
バイヤーがあなたのウェブサイトを訪問する度、お互いのバリューを交換しよう。しかし焦ってはダメだ。
バイヤーがシェアをためらう情報とあなたが望む情報との間で、バランスを測りながら進めよう。
そして常に透明性を保つのも大切なことだ。
なぜ特定の情報を求めているのか、ユーザーに分かりやすく説明しよう。
次のステップとして、バイヤーの購買体験を充実させるコンテンツを作成しよう。
少なくともバイヤーの購買ステージ、役割(購買決定者か推薦者か)、関心分野(テクニカル、ビジネス、財務)に基づいたコンテンツをカスタマイズする必要がある。これらコンテンツの評価は、最も重要なポイントとなる。
失敗すれば、いわゆる我々が呼ぶ“コンテンツのランダムアクト”状態に陥るだろう。
今求められているのは、マーケッターとバイヤーを結ぶマッチメーキングなのだ。
個別インタビューからBtoBバイヤーの要望を紐解く方法
BtoBバイヤーが購買を決める際、最も関心をもつことは何だろう?それは、リスクをできる限り取り除くことである。そしてコストが安く、更に彼らのキャリアに傷が付かない選択をすること。そのために必要になるのが、製品やサービスに関する有益な情報である。
簡単ではないか。あなたの製品やサービスを購入することで、彼らが会社のヒーローになれることを説明すればよい。
と、考えるのは間違いである。
そのようなセールスにフォーカスした視点に立ったコンテンツ作りでは、見込み客を逃してしまう。まずあなたがすべきことは、彼らのビジネスの問題をあなたの製品やサービスが解決できることを理解させることである。そのためにどのようなコンテンツを作ればよいのだろう。まずはコンテンツのための情報を集める必要がある。最も効果的な情報収集の方法が、個別に行う質の高いインタビューである。
インタビューで深く切り込む
インタビューを行う根本的な理由は、人々がその行動に至る理由を紐解くためである。そして真の理由は、ソーシャルメディアの分析からは得られない。ではどこから得られるのか?それはターゲットとする顧客数人に対して行う、型にとらわれない質の高いインタビューからである。
質の高いインタビューを行うには、インタビュアーのスキルに頼るところが大きい。相手側の心に入り込み、本心を聞き出す必要があるからだ。
ではインタビューの方法は?
グループインタビューではなく個別インタビューが効果的だと説く。グループインタビューの場合、同僚やライバルの視線があるため、慎重な回答になってしまい、彼らの本心を聞き出すことが難しい。
まず10人の個別インタビューから始めよう。そして得られた情報の質が不十分であれば、人数を増やすなりの調整を行おう。
インタビューは直接会うより、電話で行う方が質の高い回答を得られる。その方が相手側はプライベートな空間を保てるので、リラックスして話すことができるからだ。旅費がかからないので、低コストでもある。
インタビューを行う際重要なポイントは、最適な人と質問の選択をすることだ。最適な人とは、購買決定権をもち、製品やサービスの利用者である既存の顧客である。製品やサービスに満足している顧客だけでなく、不満をもつ顧客にも参加してもらおう。新製品の場合は、見込み客が相手になるのでハードルは上がるが、チャレンジする価値はある。
最適な質問とは、次のようなものである。
- 購買サイクルの各段階において、どのような疑問をもったか?
- 購買までの最大の壁は何か?それをどのように乗り越えたか?
- 競争相手が提供してきたコンテンツはどのようなものか?
- 発見が困難だった情報は何?
- 営業員との面会を決めたタイミングはいつ?
- 商品やサービスを購入するに至った決め手は?
- 実際に商品やサービスを利用して、購買前の印象と違った所とは?
重要なのは「聞く」こと
インタビューのときは、とにかく「聞く」。
インタビューの内容が脱線することもある。そのときは無理に軌道修正する必要はない。そこから最も価値のある情報が得られるかもしれない。
インタビューで得られた情報は、有益なコンテンツ作りに役立つだろう。インタビューを重ねることで最適な情報を提供するタイミングや、顧客が興味を示すタイトルなどが分かるようになるはずだ。それはマーケッターにとって、最高の武器になるだろう。
ライタープロフィール
神澤 肇(カンザワ ハジメ)
リボンハーツクリエイティブ株式会社 代表取締役社長
創業40年以上の制作会社リボンハーツクリエイティブ(RHC)代表。
企業にコンテンツマーケティングを提供し始めて約15年。
数十社の大手企業オウンドメディアの企画・制作・運用を担当。
WEBを使用した企業ブランディングのプロフェッショナル。
映像業界出身で、WEB、紙媒体とクロスメディアでの施策を得意とする。
趣味はカメラとテニス、美術館巡り、JAZZ好き。